医学論文翻訳表現集
医学論文翻訳表現集その27: 獣医学論文より
最近訳した獣医学論文より役に立つ表現をピックアップしました。
(1)[紹介元の病院]を<hospital of
origin>で表現する。
The patient was transferred back to the hospital of origin for follow-up a few days ago.
(患者は紹介元の病院に戻されて経過観察となった)
*辞書に載っていないので困っていました。やっと見つけました。「referring hospital」ともいいます。[紹介先の病院]は<the referred hospital>で表現します。
(2)[出来るようになるまで]を<to the point of being able
to>で表現する。
The patient recovered to the point of being able to walk unaided.
(患者は一人で歩けるまでに回復した)
*[まで]を<until>を使って訳さないことが重要です。<walk unaided>もとてもシンプルな表現です。
(3)[~に働きかける、~に作用する]を<trigger>で表現する。
These cytokines directly trigger the liver to produce various proteins.
(これらのサイトカインが肝臓に直接働きかけて、様々なタンパク質が生産される)
*<act on>もありますが、<trigger>の方が[きっかけに始まる]の感が強いです。
(4)[以上から~の可能性が示唆される]を<These findings suggest ~
may ~>で表現する。
Our findings suggest that oral administration of CDE may be a new treatment ~.
(以上から、CDEの経口投与が新しい治療法となる可能性が示唆される)
*ちなみに<A possibility was suggested that~>という表現を検索すると用例は非常に少なく、全員が日本人筆者です。日本人的な発想の英語の典型例と言えます。
(5)[~のリスクの可能性]を<a perceived risk
of~>で表現する。
There is a perceived risk of postoperative complications.
(術後合併症のリスクがあると考えられている)
*[リスクがあると考えられている]を直訳して<It is considered that there is a possibility that>しないことです。<perceived>でこのように表現できます。日本では使われていませんが、海外の文献では頻出しています。
(6)[可能]を<allow>で表現する。
Our method will allows for the use of various surgical instruments in the future.
(我々の方法を用いれば様々な手術器具を使うことが可能になる)
*<can>や<possible>を使わなくても、可能を<allow>でシンプルに表現できます。
(7)[有る]を<include>で表現する。
The most common complications of cosmetic surgery includes several diseases such as nerve damage~.
(整形手術の合併症には神経損傷や~などがある)
*前回は<include>を[~を認める]の表現として紹介しました。今回は[有る]です。<include>は論文では大活躍する超頻出のstrong verbです。
(8)[~が得られる]を<provide>で表現する。
These data provide valuable information to help physicians determine~.
(これらのデータから~を特定する貴重な情報が得られる)
*[改善が見られる、得られる]も<provide>を使って表現できます。
Thus, we finally found it to provide a noticeable improvement.
(その方法で顕著な改善が得られることが分かった)
(9)[障害を受けている]を<compromised>で表現する。
Patients with severely compromised liver function still had a normal CRP.
(肝機能が著しく損なわれていたが、患者のCRPは正常値を示した)
*このような文脈では<compromised>が<damaged>よりもはるかに多く使われています。
(10)[~とは無関係]を<be independent of>で表現する。
An increase of CRP levels is independent of gender and age.
(CRP値の上昇は性別や年齢とは無関係である)
(11)[外来で]を<outpatient>を使って表現する。
<The patient was treated in an outpatient setting.>
<The patient was treated as an outpatient.>
(患者は外来で治療を受けた)
*[外来で]の英訳は非常にヤヤコシイです。ちなみに大病院の「外来診療棟」は<outpatient clinic>と表現するようです。
(12)[早ければ~時間で]を<as early
as>で表現する。
CRP increases significantly as early as 3 hours after the onset of inflammation.
(CRP値は炎症を発症した後、早ければ3時間で急激に増加する)
(13)[早ければ~時間で]を<as little
as>で表現する。
Improvement may be seen in as little as 6 hours.
(早ければ6時間で改善が見られる)
*日本語の[ければ]に惑わされて<if>を使わないことが重要です。
(14)拙書「アクセプト率をグッとアップさせるネイティブ発想の医学英語論文」もよろしくお願いいたします。おっとこれは宣伝でした。
医学論文表現集その28