P&Gウェイ世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディング
マーケティング翻訳
翻訳書:P&Gウェイ 世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡
グローバルカンパニーP&Gの歴史について学習したければこの一冊をお勧めします。本書はP&Gのブランド構築の秘訣を徹底的に解明した本でもあります。P&Gはその存在自体が経営学・マーケティングの教科書です。P&Gの成り立ちから現在に至るまで、また日本での歩み、社会との関わり、消費者との関わりなどについて詳述されており、資料としては一級品といえます。
P&Gのこれまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。それどころか、幾多の苦難の連続です。あまりよく知られていませんが、P&Gの歴史は順風満帆と思いきや、実は、逆風との闘いの歴史なのです。どのようにして困難を切り抜けてきたのでしょうか。華々しい側面だけを見て真似ようとしても失敗するだけです。ビジネスの成功には優れた問題解決能力を身に着けることが大切です。そのあたりを読んでいただけたらと思います。
本書ではP&Gの歴史の草創期から現在に至るまでを振り返りながら、伝説的なブランドであるアイボリー、タイド、クレスト、パンパースなどの誕生とその進化が余すところなく克明に描かれています。またその後の歴史の中で、P&Gが消費者満足や世界での競争を学習してきた経緯が、製品革新、世界展開、リーダシップの変化、ブランド構築などのキーワードを通じて解説されています。
特に興味深いのは日本市場への進出でしょう。日本市場への進出はジョイントベンチャーとして始まりました。幾多の失敗がありました。例えば、初期のチアーや流通戦略の失敗、パンパースの成功と失敗、革新的は流通改革、大規模なコスト削減を実施せざるを得なかったことなどです。またジョイ、プリングルス、SK-IIの成功なども克明に解説されています。近年のP&Gの世界戦略であった大規模なリストラや、ECR活動(サプライチェーンの見直し)、中国での苦戦などについても詳しく描かれています。
私の読後感想は、一言で言えば、『P&Gはど根性の会社』であるということです。この会社の成功の裏には全ての社員の半端ではない根性があったとしか言いようがありません。この会社に勤める人たちは非常に粘り強い人たちです。その点において日本一、いや世界一です。何事に対しても決して簡単には諦めないのです。P&Gではなぜそのような人材が育つのか、大いなる興味をお持ちの方も多いと思います。本書をご一読頂くと、P&G流人材教育の一端が伺われると思います。
本書は、世界的優良企業であるP&Gに興味を持つビジネスマンは勿論、ブランド論やマーケティングを学ぶ人、将来は外資系企業やグローバル企業に勤務したい学生、また現在海外進出に携わる企業の経営企画部や広告代理店勤務の方には、読んでおいて損はない良書としてお勧めします。