独学でプロの翻訳家になる方法
独学でプロの実務翻訳家になるには
独学でプロの実務翻訳家になる方法、といっても、全ての人が自分の力でフリーランスの実務翻訳者になっており、特に変わった方法があるわけではありません。私も最初に翻訳学校に通い、通信教育も受けました。もちろん、翻訳学校に行かなくても、通信教育を受けなくても、翻訳家になっている方もおられます。しかしやはりプロの実務翻訳家翻訳者になるには「翻訳学校に通い、通信教育を受ける」ことから始めるのが基本だと思います。自分では上手にできたと思っていてもボロボロに赤の添削の入った訳文を返してもらうと、客観的な自分の実力を思い知らされます。自分は自分で思っているほど上手ではありません。
問題はその後です。その昔、「学校は出たけれど」という言葉がありました。大学は出たけれど、という意味でした。おそらく、「翻訳学校は出たけれど」と思っている方は多いのではないかと思います。私も以前そう思っていました。でも、翻訳学校を出てもプロの翻訳家になるまでお世話してもらえるわけではありません…。翻訳のコツを伝授して頂いても、それ以降は自分の責任です。では、翻訳学校を出た後に何をすればよいのでしょうか?これから何回かに分けて、「翻訳学校を出た後に何をすればよいか?」の、あくまでも個人的な体験を書きたいと思っています。
最も大切なことは会社で習っている
セミナーに参加すると、起業された講師の「会社がイヤでイヤでしかたがなかった」という体験談をよく聞きます。セミナーの冒頭のツカミの常套句としてはとても優れています。なにせ参加者の心をこの一言で掴むことができます。かく言う私も「会社がイヤでイヤでしかたがなかった」方です。でも今になって振り返ってみると、「会社からとても大切なことを学んだ」と考えています。そしてそれが「独学でプロの翻訳家になる」うえでとても役に立っています。
「企業内起業家」という言葉があったのを覚えていませんか?今では死語となったのでしょうか?だとすれば残念です。会社はとても大切なことを教えてくれています。その一つが「企業内起業家」です。上司から仕事を与えられそれを黙々とこなす。それは社会人の第一歩としては基本中の基本ですが、やがて「企業内起業家」であることを期待されます。この「起業家精神」が翻訳家として独立するためには何よりも大切です。もちろん最初は、「会社がイヤでイヤでしかたがなかった」ので会社を辞めて翻訳業を志したでも問題ありません。しかしその後の翻訳人生を発展させようと思えば、それ以降は「起業家精神」を発揮できなければ明るい将来を切り開くことは極めて難しいです。言い換えれば、『自分で仕事を作り出すことが嫌いな人は起業家には向いていない』、ということです。
「自分は起業家ではない」、とお感じの方も多いと思います。しかし、少なくとも「事業主」であることには間違いありません。事実、翻訳業に就くと、自分を役所に「事業主」として登録します。「事業主」です、事業の主。「事業の主」であることから逃れることはできません。もちろん、「事業主」として登録しないという選択肢もあるのではないかと思いますが、私は「事業主」と見なされることを選びました。法人に例えれば「社長」です。それはつまり起業家です。結局、翻訳家=起業家となります。この意識がとても大切だと考えています。
セレンディピティのアンテナを研ぎ澄ます
「セレンディピティ」という言葉はご存じだと思います。私の記憶が正しければ、数年前に脳科学者の茂木先生がよく使われていたと思います(あるいは明治大学の斎藤孝先生だったか…記憶があやふやでスミマセン…)。これは好機を掴む能力のことです。私が最も大切にしていることの一つが、この「セレンディピティのアンテナを研ぎ澄ます」ことです。水清寺清子さんの「幸せは歩いてこない、だから歩いて行くンだよ~♪」の歌詞は、この「セレンディピティのアンテナを研ぎ澄まし、自分から積極的に好機を掴みに行く」ことを言い換えたものです。私の年代の人にはこの歌詞が体に染みついていると思います。起業家たるもの、この「セレンディピティのアンテナを研ぎ澄ます」努力を怠ってはなりません。つまり「他力本願」では道を切り拓くことは困難です。あ、思い出しました。国語の教科書で『道程』を習いませんでしたか?「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」が最も有名な一節ですね。この精神というか発想が非常に大切だと思います。
ちょっと前置きが長くなりました…。でもこれらは大切なことです。プロの翻訳者・翻訳家になるには、どんな辞書を使うとか、どんなソフトを導入するとか、どんなPCを使うとかを思案する前に、事業主としての意識を高く持ち、セレンディピティのアンテナを研ぎ澄まして、起業家精神を発揮する。これがフリーランスとしての第一歩です。もっと大切な事がありますが、ちょっと休憩。また書きます。では、では。